「THE iDOLM@STER」Side Story
「プレゼント・パニック！」
〜亜美・真美の場合〜
「ねーねー、亜美」
「？」
都内某所、「双海」と表札のあるマンションの一室。
その一画にある洋間は、当年十二歳になる、この家の双子の娘の居室である。
並んだ布団にくるまっているその娘――「双海亜美」と「双海真美」は、７６５プロと契約しているれっきとした芸能人である。
この双子、現在はわけあって「双海亜美」という一つの名前を共有して芸能活動をしているのであるが……。
閑話休題。
真美の質問に亜美が目を見開いて反応すると、真美が続ける。
「最近、やよいっちとかはるるんとかまこちん、ファンの子からいっぱいプレゼントもらってるよね？」
「そだねー、真美。
こないだは千早お姉ちゃんもお歌もらってたし」
「で、真美考えたんだけど……、
今度のお仕事の時、真美たちの好きなもの、どどーんと大公開しちゃわない？
そしたら、ファンの子がいーっぱいプレゼント持ってくるかも」
「あっ、それいいね！ ナイスアイデアだよ真美」
実際、この一連のプレゼント騒動のおかげで、亜美たちも他のアイドルたちからの贈り物のおすそ分け――やよいからはもやしや缶詰、レトルト食品など、春香からはお菓子、真からは漫画本――に与っている。
「うーん、何がいいかな？」
「うーん……」
しばらく考え込んでいたが、やがてどちらからともなく
「そうだ。げんて→アクセとかどうかな？」
「あっ、それいいね。
この前ママがネイルメロン？ 行ってやってもらったっていうネイルアートとかさー」
「あとは、近所のお店で売ってたやつみたいな、ひらひらで色がキレ→なあじあのみんぞくいしょ→とか…」
二人の話はいつまでも続いた。
そして次の日。
先日の「発掘！アイドル大辞典」のオーディションで、亜美がライバル事務所のユニット「国語」を撃破してから、応援記事を書いてもらっている「月刊アイドル・グラフィティ」の善永記者のインタビュー。
「最近、亜美ちゃんがハマっていることって何かな？」
「うーん、そうだね……。
亜美は最近、アジアのアクセとか洋服とかがオキニかな？
近所で、そーゆーの売っているお店があるんだけど、そこの服って、ひらひらで色がキレーだから、亜美、超→お気に入り」
「そんでそんでそんで、真美は、最近ママが買ってきたせくち→ならんじぇりーも…」
その発言が、雑誌にほぼそのまま掲載されると……
全国各地に点在する、アジア系の衣装を扱っているショップやランジェリーショップに、アイドルファンの男性が列を成す、という珍現象が発生した。
しかもそこにいたファンが「十二歳の女の子に……」と言ったものだから……。
「このところ、各地で『十二歳の女の子にプレゼントを贈る』という男性が大量に出現しており、警察では未成年者を対象とした性犯罪との関連を……」
そんなニュースが流れるに至って
「亜美、なんか大変なことになっちゃったよねー」
「そだねー、真美」
そういいつつも、どこか他人事のように見ている二人。
と、そこへ……
「あーみー、まーみー。
俺、おまえらにちょーーーーーっとばかし聞きたいことがあるんだけどー」
小次郎がぬっと現れたものだから
「に、にーちゃん。なんか目が笑ってないよ……」
そういいながら、後ずさりする亜美と真美。
「おまえら、逃がさんぞー！」
「うぁー、にいちゃんがマジで怒ったー」
「……社長、止めなくていいんですか？」
「仲良きことは、美しきこと、だな」
「そういう問題には見えないと思うんですが…」
この三人を見ていた一組の男女が、そんな会話を交わしていたのはまた別の話。