「THE iDOLM@STER」Side Story
「漂流姫200X」
初出：2007年8月19日「コミックマーケット72」頒布
プロローグ
「では、春香ちゃんに歌っていただきましょう。
歌は、なんと今週で11週連続ヒットチャート１位のこの曲
『太陽のジェラシー』！」
「…この娘が『天海春香』かね？」
「はい、御前」
大画面の液晶ディスプレイには、前世紀の女学生を髣髴とさせるような純朴さを醸し出す衣装に身を包んだ少女が映し出されている。
放送されているのは、超人気アイドル（それも１回の放送で男女それぞれ１〜２組）しか出演ができない、という不定期放映の歌番組「IDOLVISION」であった。
それを見入っている二人の人物――
「聞けば、かつての『葉室南海江』『濱崎亜由美』に匹敵する人気を誇るとかいうそうじゃな？」
「はい。
先にそちらへ送った人物資料にもあります通り、素行にもまったく問題ございません。
我らの『計画』には、ぜひ欠かせない戦力になるかと…」
「御前」と呼ばれた片方の人物はしばし沈黙していたが、やがておもむろに口を開いて
「よろしい、大いにやり給え」
その声に、もう片方の人物は「御前」に一礼して歩み去る。
♪追いかけて 逃げるふりをして
そっと 潜る 私マーメイド♪
「御前」はＴＶから流れる少女――春香の歌を聴きながら
「天海春香、か…。
この女を我が手に入れれば、『計画』は大いに前進する…」
そんなことをつぶやいていた。